20代で引退したアスリートの、その後の長いキャリアの話

20代で競技を終える、という人がいます。
まだ若いのに、と周りは思うかもしれません。
でも本人にとっては、人生で一番長く続けてきたことが終わる、大きな節目です。
今日は、ある調査の数字を手がかりに、「その後の長いキャリア」について、一緒に考えてみます。

目次

目次

  1. 25歳で、競技が終わった朝のこと
  2. 「終わった」と「始まった」が、同じ日に来る
  3. 調査の数字を、限界も含めて読んでみる
  4. 長い時間を、一度に決めようとしなくていい
  5. 線を一本、引いてみる
  6. この続きは、また書いてみたい

❶ 25歳で、競技が終わった朝のこと

ここは「たとえば」の場面です。

引退して、最初の週の朝。
目覚ましを、かけなくていいことに気づく。
昨日までは、朝の練習に間に合うように起きていた。
今日は、どこにも行かなくていい。

ほっとする気持ちも、あるかもしれません。
同時に、少し落ち着かない。
自分は今、何をする人なんだろう、と。
いや、そこまで考えていなくて、ただ、ぽかんとしているだけかもしれません。

肩書きを聞かれたとき、「元〇〇選手です」と答えるのか。
それとも、今の自分の言葉を、これから探すのか。
そんなことを、ぼんやり考える朝になるかもしれません。

もちろん、人によって感じ方は違います。
あくまで、ひとつの「たとえば」です。
今日は、その朝のあとに続いていく、長い時間の話です。


❷ 「終わった」と「始まった」が、同じ日に来る

競技を終えた日は、競技人生が終わった日です。
でも、見方を変えると、次の時間が始まった日でもあります。
終わりと始まりが、同じ日に、同時にやってくる。

そう言われても、すぐには切り替えられませんよね。
切り替えられなくても、不思議ではありません。
長い年月をかけてきたことが終わったのですから、気持ちが追いつかないのは自然なことです。

「まだ若いから大丈夫」と、軽く言われることもあるかもしれません。
でも、若いかどうかと、気持ちの整理がつくかどうかは、別のことですよね。
私は、「大丈夫」と言い切るより先に、まず戸惑いを認めたいと思っています。

20代で競技を終える場合、同い年の友人は、すでに仕事を始めて数年たっているかもしれません。
周りと自分とで、時間の流れがずれているように感じる人も、いるかもしれません。
これは私の見方です。
人によって、感じ方は違うはずです。

戸惑っている自分を、責める必要は全くありません。
次の時間の話は、そのあとで、少しずつで十分です。


❸ 調査の数字を、限界も含めて読んでみる

ここで、ある調査を紹介します。
ラグザス株式会社の「アスリートのセカンドキャリアに関する調査(2024)」です。
2024年9月17日に発表されました
(出典:PR TIMES)
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000210.000072123.html

先に、調査の中身を書いておきますが、対象は、全国の20〜50代の男女で、学校を卒業したあと就職せず、プロのアスリート、またはプロを目指していた人です。
回答したのは115人。
調査期間は2024年8月29日と30日、インターネット調査です。
今から2年ほど前の、115人の調査になります。
発表元は、人材サービスを運営している会社で、リリースにはそのサービスの紹介も含まれていました。
サンプルの選び方や、誤差の扱いは、書かれていませんでした。
そのことを頭に置いたうえで、数字を見ていきます。

まず、引退した年齢です。
20〜24歳が41.4%、25〜29歳が43.7%
合わせて、20代で引退した人が85.1%という結果でした。

次に、引退後のことです。
引退後に就職活動をした人は、80.0%でした。
不安として多かったのは、「競技のように熱量を注げるか」「仕事探し」「収入面」の3点だったと、リリースには書かれています。
この3点の割合は、載っていませんでした。

就職活動で苦労したことは、次のとおりです(就職活動をした人への質問)
「周囲に相談できる人がいない」が34.7%
「自分に何が合うかわからない」が32.6%
「就職活動の方法がわからない」が30.4%。

そして、必要だと感じたサポートです。
「自分に合う企業を見つけてくれる」が48.7%
「気軽に相談できる環境」が41.7%でした。

リリースの中では、「仕事がない」ことよりも、仕事を探す前の段階でつまずく人が多い、という解説が付いていました。
これは調査会社の見方です。

ここからは、私の見方です。
この85.1%を見て、「20代で引退する人が多い」と言い切ることは、控えます。
対象が、20〜50代の、プロやプロを目指していた人に限られているからです。
この調査に答えた人の中には、20代で競技を終えた人が、大勢いた。
そのことは、数字から言えそうです。

もう一つ、気になったことがあります。
就職活動で苦労したことの1位が、「周囲に相談できる人がいない」だった点です。
方法が分からない、自分に何が合うか分からない、より先に挙がっています。
3つの数字は近いので、順位に大きな意味があるとは、言い切れません。
それでも、「話せる相手がいない」という悩みが、上位にあったことは、覚えておきたいですし、リアルな悩みなのだと感じました。

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❹ 長い時間を、一度に決めようとしなくていい

ここは「たとえば」の計算です。

25歳で引退した人が、60歳まで働くとします。
その場合、競技を終えたあとの時間は、35年あります。
もちろん、働く年齢は人それぞれですし、これは仮の計算です。
長く続けてきた競技の時間より、これから先の時間のほうが、長くなるかもしれない。
そう考えると、少し見え方が変わりませんか?

私は、35年以上、会社員として働いてきました。
その中で、2度のリストラも経験しています。
環境が大きく変わる場面を、何度か通ってきた、ということです。
もちろん競技の世界とは違います。
でも、長く働くあいだには、思いもよらない場面が来ることがある。
それは、私にとっても身近な話です。

だからこそ、思うんです。
35年という時間を、今日一日で決めようとしなくていい、と。
というより、決められるはずがない、のほうが正確かもしれません。

私は道(キャリア)の全体を、先に描き切る必要はないと思います。
霧の中を歩くとき、見えているのは、足もとから数歩先くらいです。
それでも、数歩先は見えている。
数歩ずつ進めば、少しずつ、霧は晴れていきます。

今決めるのは、全部ではなく、次の一歩だけ。
たとえば、今日決めることを、「来週、一人の人に話してみる」くらいに小さくしてもかまいません。
小さくても、一歩は一歩です。

そのくらいの気持ちで、いいんじゃないでしょうか。


❺ 線を一本、引いてみる

では、次の一歩を考える前に、紙に線を一本、引いてみませんか。

横線を引いて、左のはしに、今の年齢を書きます。
右のはしには、自分で「このくらいまで働くかな」と思う年齢を書きます。 60歳でも、65歳でも、まだ決められなければ、「?」でもかまいません。

次に、競技をしてきた年数を、線の左側に、印で付けます。
「ここまでが、競技の時間」。
そして、その右側に、まだ何も書かれていない時間が、残っています。

その空白の時間に、やってみたいことを、一つだけ書いてみてください。
大きなことでなくて、大丈夫です。
「人に教えてみたい」「体を動かす仕事も気になる」「まだ分からない」。 どれでも構いません。

「まだ分からない」と書けたなら、それも一つの答えです。
分からないと気づけたのは、考えはじめたからですよね。

線を引くと、競技をしていた時間が、思ったより短く見える人もいるかもしれません。
反対に、思ったより長く見える人もいるでしょう。
どちらに見えても、間違いではありません。

答えは、今日出さなくていいです。
紙は、ノートにはさんでおいて、また開きたくなった日に、開けばいいんです。


❻ この続きは、また書いてみたい

私は、キャリアコンサルタントとして、2026年7月からアスリートのデュアルキャリアとセカンドキャリアの支援をしています。
目の前の一人ひとりの話を、ていねいに聞くところから始めています。

今日紹介した調査では、就職活動で苦労したこととして、「周囲に相談できる人がいない」が34.7%でした。
一人で抱えていると、長い時間のことは、いっそう大きく見えてしまうかもしれません。
線を引いてみて、何かが引っかかったなら、誰かと話してみてください。
その一人に、私が入れたら、うれしいです。

20代で競技を終えた人の、その後の時間について、私が分かっていることは、まだ多くありません。
20代で競技を終えたあとの、長い時間の話は、まだ書き足りません。
この話の続きは、いつかまた書いてみたいと思います。

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