長くいた場所を離れたあと、気持ちの置き場がなくなる。
そんな感覚を持つ人も、いるのではないでしょうか。
先日、あるプロ野球選手が、退団後に自分のnoteで、プロ4年間を振り返っていました。
今日はそのnoteを手がかりに、「自分の言葉で振り返る」という整理の仕方を、一緒に考えてみます。
目次
- 気持ちの置き場がなくなる、夜
- 整理がつかないのは、おかしなことではない
- ある選手が書いた、プロ4年間のnote
- 自分の言葉で振り返ると、何が整うのか
- 書くのが苦手なら、話してもいい
- 聞き役なら、できます
❶ 気持ちの置き場がなくなる、夜
ここは「たとえば」の場面です。
長くいた場所を離れて、数日がたった夜。
布団に入っても、頭の中に出来事が浮かんでくる。
うれしかった日のこと。
悔しかった日のこと。
言えなかった一言。
どれも、順番がばらばらです。
ひとつ思い出すと、別のことが割り込んでくる。
結局、何も整理できないまま、朝になる。
朝になると、また一日が始まります。
でも、頭の中だけで抱えた出来事は、朝になっても、そのまま残っていたりします。
そんな夜を過ごすアスリートも、いるかもしれません。
もちろん、人によって感じ方は違います。
あくまで、ひとつの「たとえば」です。
今日は、そのばらばらの出来事を、少しだけ並べてみる話です。
❷ 整理がつかないのは、おかしなことではない
先に言っておくと、すぐに気持ちが整理できなくても、おかしなことではありません。
長い時間、同じ場所で、同じことに向き合ってきたのですから。
終わってすぐに、きれいにまとまるほうが、不思議かもしれません。
「早く前を向かなきゃ」と、焦る人もいるでしょう。
周りから「次は何をするの?」と聞かれて、答えに詰まることもあるでしょう。
でも、急がなくて大丈夫です。
ここで、私の見方を一つ。
「振り返る」ことは、過去を終わらせるためだけのものではない、と思っています。
次に進むときの、材料を整えるための時間でもある。
そんなふうにも、考えられるのではないでしょうか。
それに、誰かに見せるために、振り返る必要もありません。
自分だけのメモとして、ひっそり書いてもいいんです。
もちろん、振り返りたくない時期も、あっていいんです。
今日の話は、「やったほうがいい」という話ではありません。
「こういう形もありますよ」という、ご紹介です。
❸ ある選手が書いた、プロ4年間のnote
ここからは、事実の紹介です。
元阪神タイガースの戸井零士さんが、2026年10月10日に、自分のnoteを公開しました。
タイトルは、「戸井零士、プロ4年間を振り返って」です
(出典:本人のnote)。 https://note.com/t_reiji44/n/n22fe296ecd30
私が原文で確認できたことを書きます。
まず、この記事は、本人が話した内容を、友人が文章にまとめた形式だと、書かれています。
プロ入り前の「祖父との約束」から始まって、そのあとは年ごとに区切って、時間の順に振り返っていて、書いた理由について、本人は、これまで応援してくれた人たちに、お礼や気持ちを伝えたかったからだと。
中身の細かいところや、本人の気持ちについて、私が説明できる立場にないですので、 本人の言葉は、本人のnoteで読んでもらいたいと思います。
ここからは、私の見方です。
このnoteを読んで、私が目を留めたことが、三つあります。
一つ目は、「年ごとに区切っている」こと。
二つ目は、「誰に向けて書くか」が、はっきりしていること。
三つ目は、「書くのが得意でなくても、書ける形がある」こと。
次の章で、この三つを、一つずつ見ていきます。
❹ 自分の言葉で振り返ると、何が整うのか
一つ目は、年ごとに区切ることです。
写真を整理するときを、思い浮かべてみてください。
ばらばらに散らばった写真を、そのままでは、見返しにくいですよね。
年ごとに分けて、アルバムに並べると、見返しやすくなります。
出来事も、似たところがあるかもしれません。
「この年は、こういう時期だった」と、ひとつずつ区切ると、全体が見えやすくなる気がします。
たとえば、競技を10年続けた人がいるとします。
「入った年」「いちばん調子が良かった年」「迷っていた年」。
年ごとに、一言だけ付けてみる。
それだけでも、10年が、一本の流れとして見えてくるかもしれません。
二つ目は、誰に向けて書くかです。
戸井さんは、応援してくれた人たちへのお礼として、書いたそうです。
誰に向けて書くかが決まると、何を書いて、何を書かなくていいかが少し決めやすくなるのかもしれません。
「誰に伝えたいか」を先に決めるのは、一つの方法ですよね。
ここで、ある調査も紹介します。
ラグザス株式会社の「アスリートのセカンドキャリアに関する調査(2024)」です
(出典:PR TIMES、2024年9月17日発表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000210.000072123.html
対象は、全国の20〜50代で、学校卒業後に就職せず、プロのアスリート、またはプロを目指していた人。
回答したのは115人で、2024年8月のインターネット調査です。
この中で、引退後に就職活動をした人に、苦労したことを聞いています。
「周囲に相談できる人がいない」が34.7%
「自分に何が合うかわからない」が32.6%
「就職活動の方法がわからない」が30.4%でした。
この調査は、振り返りの効果を調べたものではありません。
なので、「振り返ると、何が合うかが分かる」と言うことはできません。
ただ、私は、こう考えています。
「自分に何が合うかわからない」と感じたとき、これまでの時間を、自分の言葉で並べ直すことは、手がかりの一つになるかもしれない、と。
これは、あくまで私の見方です。
❺ 書くのが苦手なら、話してもいい
三つ目は、書くのが得意でなくても、振り返りはできる、ということです。
戸井さんのnoteは、本人が話した内容を、友人が文章にまとめた形式だと、書かれていました。
つまり、「全部を自分で書く」以外の形も、あるということです。
たとえば、スマホに向かって、声に出して話してみる。
録音しておいて、あとから聞き返す。
あるいは、信頼できる人に、聞いてもらう。
というより、まずは自分の声を、自分で聞くだけでも十分かもしれません。
書くより話すほうが、言葉が出やすい人も、いるかもしれません。
録音は、誰にも聞かせなくてかまいません。
自分だけが聞く、という使い方もあります。
私も、noteで文章を書いています。
でも、書くことが向いている人ばかりではない、と思っています。
大事なのは、形ではなくて、「自分の言葉で、出してみる」ことなのかもしれません。
話してみるときに、こんな問いを三つだけ試してみてください。
・いちばん長くいた場所は、どこでしたか。
・いちばん印象に残っている場面は、どんな場面でしたか。
・ありがとうと伝えたい人は、誰ですか。
すべてに答えなくても、構いません。
一つだけでも、いいです。
答えは、今日出さなくていいです。
声に出してみたくなった日に、試してみてください。

❻ 聞き役なら、できます
私は、アスリートのデュアルキャリアとセカンドキャリアの支援をしていますが、「みなさん、こうです」と言い切ることはできません。
目の前の一人ひとりの話を、ていねいに聞くところから始めています。
さきほどの調査では、就職活動で苦労したこととして、「周囲に相談できる人がいない」が34.7%でした。
話す相手がいない、という悩みが挙がっていたことは、心に留めておきたいと思っています。
話すのは、うまくなくてかまいません。
途中で止まっても、言い直しても、いいんです。
整った言葉でなくても、そのまま聞きます。
もし、声に出して話してみたい日が来たら。
その聞き役なら、私にもできます。
まずは、一年分だけで、十分です。
いちばん最近の一年を、どんな年だったか、話してみる。
そこから、始めてみませんか。

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