最近、スポーツニュースを見ていると、ある言葉を目にする機会が増えました。
「現役引退」
柔道の金メダリスト、角田夏実さん。
最近ではスピードスケートの高木美帆さん、フィギュアスケートの坂本花織さん等、長く活躍してきた選手の名前の横に、静かにその二文字が並びます。
ニュースでは、ほんの一行。
しかしその裏には、長い競技人生での数えきれない努力
そして、次の人生への決断があります。
私はキャリアコンサルタントとしてアスリートのキャリア支援に関わる中で強く感じることがあります。
この「引退」という瞬間が、選手にとって決して終わりではないことを。
むしろそれは
人生の次の章の始まり
だということです。
目次
- なぜ引退は「不安」に見えるのか
- セカンドキャリアは「やり直し」ではない
- 私自身の経験からの気づき
- 変化の時代はアスリートに追いついた
- 次の人生を広げる3つの視点
- 引退は、人生の終わりではない
1. なぜ引退は「不安」に見えるのか
以前、何人かの元アスリートの方と対話をした際に、ほとんどの方が引退を前にこう感じていました。
「競技しかしてこなかった」
「自分には何ができるのか分からない」
それは決して珍しい感情ではありません。
競技の世界では、
・勝敗
・記録
・ランキング
という明確な評価軸があります。
しかし引退後の働き方には、そのような“分かりやすい基準”がありません。
だからこそ、
「自分には価値があるのか」
という不安が生まれます。
でも、私はいつも思うのです。
それは能力不足ではなく、
価値の翻訳がされていないだけだと。

2. セカンドキャリアは「やり直し」ではない
引退した何人かの元アスリートの方たちから、このような思いをお聞きしました。
「またゼロからやり直しですよね」
その気持ちはよく分かります。
競技の世界では、これまで積み上げてきたものが、突然終わったように感じるからです。
でも私は、キャリア支援の現場で何度も気づかされてきました。
アスリートの人生は、ゼロに戻ることはありません。
例えば考えてみてください。
ケガをして試合に出られなかった時。
連敗が続いて自信を失った時。
チームの中で役割が変わった時。
そのたびに、アスリートのあなたはどうしてきたでしょうか。
あきらめて終わりにしたでしょうか。
きっと違うはずです。
自分を立て直し、もう一度練習に向かい、次の試合に備えてきたはずです。
それこそが、アスリートが積み上げてきた力です。
・継続する力
・逆境から立て直す力
・チームで信頼を築く力
・自分を律する力
これらは、競技だけの能力ではありません。
社会でも必要とされる「人間力」です。
だから私はこう思っています。
セカンドキャリアとは、人生をやり直すことではなく、
競技で磨いた力を、社会で使う場所を見つけること。
つまり、
アスリートのセカンドキャリアは「リスタート」ではなく
「フィールドを変えた挑戦」なのです。
そして、その挑戦は——
すでにあなたの中にある力から始まります。」と言った選手
以前、ある元選手とお話ししたときのことです。
その方はこう言いました。
「自分には特別なスキルはありません」
私はこう質問しました。
「一番苦しかった時、どうやって立て直しましたか?」
すると、その選手は少し考えてから話し始めました。
ケガからの復帰の話。
モチベーションが落ちた時の話。
チームメイトとの関係を立て直した話。
それは、まさに
逆境耐性のストーリー
でした。
その話を整理して伝えると、その選手は少し驚いた顔をして言いました。「それって、強みなんですね」
その瞬間、私は改めて確信しました。
価値は、ないのではなく
気づいていないだけなのだと。
3. 私自身の経験からの気づき
実は、私自身も人生の転機を経験しています。
何度かお話してきましたが、過去に2度のリストラを経験し、
将来が見えなくなった時期がありました。
収入が途絶え、未来が真っ暗に感じました。
本当に辛かった….
その時、支えてくれたのは人とのつながりでした。
そして私は気づきました。
人は一人では立ち直れない。
でも、支え合えば前に進める。
この経験が、キャリア支援の道へ進むきっかけになりました。
今、アスリートのセカンドキャリア支援に関わる中で、
その想いはさらに強くなっています。

4. 変化の時代はアスリートに追いついた
今の日本社会は、大きく変化しています。
終身雇用は揺らぎ、副業は一般化し、キャリアは流動化しています。
企業も個人も求めているのは
変化に対応できる人
です。
そしてその環境は、アスリートのあなたにとって特別なものではありません。
契約更新
役割変化
環境変動
それは、アスリートの世界では日常です。
つまり、
アスリートのあなたは、変化の時代を先に生きてきた存在
なのです。
5. 次の人生を広げる3つの視点
引退後の人生を広げるために、私が大切だと感じている視点があります。
① 競技経験を言語化する
勝敗ではなく、
・役割
・判断
・工夫
を書き出してみてください。
そこに価値があります。
② 小さく社会と関わる
いきなり大きく変える必要はありません。
・講演
・地域活動
・指導
小さな関わりから始めることで、新しい可能性が見えてきます。
③ 一人で抱え込まない
何度か申し上げてきましたが、セカンドキャリア支援を受けることは、弱さではありません。
戦略です。
孤立はリスクを高めます。
つながりは可能性を広げます。

6. 引退は、人生の終わりではない
ニュースでは「引退」という言葉でまとめられます。
でも、私は思うのです。
それは終わりではありません。
むしろ、人生の物語が次の章に進む瞬間です。
競技が終わっても、アスリートのあなたの価値が終わることはありません。
むしろ、これまで積み上げてきた経験が、未来を支える力になります。
引退のニュースの裏側には、引退後の人生を選ぶ決断があります。
その選択は、誰かに決められるものではありません。
アスリートのあなた自身が決めるものです。
そして私は、その選択を支える存在でありたいと思っています。
焦らなくていい。
でも、しっかりと目を開いてみてください。
あなたの人生の物語は、まだ続いています。


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