今日は、支援の現場で感じてきた、あるもったいない場面についてお話しします。
誰かに言われたわけでも、何かに失敗したわけでもないのに、気づかないうちに自分の未来を小さくしてしまっているアスリートが、実はとても多いんです。
心当たりがあっても、なくても、ぜひ最後まで読んでみていただけますと嬉しいです。
目次
- 「引退後が不安」なのは、当たり前のこと
- 「スポーツしかやってない自分」という言葉が、一番怖い
- キャリア支援の現場で見た、選択肢が狭まる “3つの瞬間”
- 一歩だけ、踏み出すとしたら何をすればいい?
- アスリートの競技人生は、すでに価値の塊だ
1.「引退後が不安」なのは、当たり前のこと
幾度となく、アスリートのみなさんへお伝えしてきたこの思い。
アスリートの皆さんは引退後のご自分を、ちゃんとイメージできているでしょうか。
仕事のこと、収入のこと、「競技以外で自分に何ができるのか」ということ。
考えようとするたびに、なんとなく不安になって、気づいたらスマホを閉じていたり、「まあ引退してから考えよう」と思い直したりしていないでしょうか。
それ、全然おかしくない。
むしろ、ごく自然な感覚です。
競技に全力を注いできた人間が、引退後の仕事のことをスラスラ答えられるほうが不思議だと、私は思っています。
ただ、一つだけお伝えしたいことがあります。
その「まあいいか」が積み重なるほど、未来の選択肢は静かに、確実に狭まっていくということ。
今日はそのことを、現場で感じた具体的な場面を交えながら、一緒に考えたいと思います。

2.「スポーツしかやってない自分」という言葉が、一番怖い
支援の現場でアスリートと初めて話すとき、高い確率でこんな言葉が出てきます。
「私、スポーツしかやってきていないので……」
この言葉を聞くたびに、私は少し悲しくなるときがあります。
同時に、絶対に伝えたいと思うことがあります。
アスリートはよく「スポーツしかやってきていない」と思ってしまうようですが、そんなことは絶対になく、
スポーツを通じて、すでに膨大なことを身につけてきたのです。
早朝から練習を積み重ねる自己管理力。
負けた翌朝でもグラウンドに向かえるメンタルの強さ。
チームの中で自分の役割を考え、全力で果たす協調性と責任感。
コーチの言葉を瞬時に理解して体で表現する、圧倒的な学習速度。
これ全部、「どんな職場でも即戦力になれる力」です。
問題は「力がない」のではなく、それを仕事の言葉に変換したことがない、ただそれだけなのです。
「スポーツしかやっていない」と口にする瞬間、アスリートはすでに、自分の価値を半分以下に見積もってしまいます。
ですので、その言葉を使うこと、考えることを今日からやめてみてください。
3. キャリア支援の現場で見た、選択肢が狭まる “3つの瞬間”
では実際に、どんな場面でアスリートの選択肢は狭まってしまうのか。
支援を通じて感じてきた、3つの具体的な瞬間を紹介したいと思います。
【瞬間①】「資格がないと無理ですよね」と言うとき
引退後の仕事を考え始めると、「何か資格を取らないといけないですよね」という話になることが多いです。
資格があれば安心、という気持ちはわかります。
でも少し考えてみてください。
世の中の仕事のうち、資格が必須なものは、実はごくわずかです。
それよりはるかに多くの仕事が、人としての信頼・経験・コミュニケーション力で成り立っています。
資格は「入口のドア」を開ける鍵にはなるかもしれません。
でも、その部屋で活躍できるかどうかは、アスリート自身の力次第です。
資格がないからとネガティブになる前に、「自分が持っている力で、どんな仕事ができるか」を先に考えてみてはどうでしょうか。
【瞬間②】スポーツ関連の仕事だけに絞り始めるとき
「やっぱりスポーツに関わる仕事がしたい」という気持ちは、自然ですし、素晴らしいと思います。
でも現実として、スポーツ業界のポストは数が限られています。
もし、その枠だけを追い続けると、競争は激しく、収入も安定しにくい状況に置かれることも少なくありません。
ここで知っておいてほしいことがあります。
「アスリートが持つ力は、スポーツ以外の業界でこそ希少価値になる」
ということです。
ビジネスの世界では、プレッシャー下で結果を出せる人、チームをまとめられる人、あきらめずにやり切れる人が、本当に求められています。
その力を持っているのが、他でもない、アスリートの皆さんであると感じております。
【瞬間③】「まだ現役だから」と後回しにするとき
引退まで1〜2年を切っていても、「今は競技に集中したいので、引退してから考えます」というアスリートが、ほとんどかもしれません。
その気持ちは痛いほどわかります。
でも現実は、引退の瞬間から収入・住まい・社会保険・確定申告といった問題が、待ったなしで押し寄せてきます。
競技中の「忙しさ」とは、まったく質の違う忙しさが来ます。
準備は、現役中にしかできない。
引退後では間に合わない準備が、確かにある。
今すぐ大きく動く必要はありません。
ただ、「知ること」「考え始めること」だけは、今日から始めてほしいと思います。

4. 一歩だけ、踏み出すとしたら何をすればいい?
ここまで読んでくれたアスリートに、具体的にたった一つだけお願いがあります。
自分がこれまでやってきたことを、紙に書き出してみてほしいのです。
競技歴、ポジション、チームでの役割、一番きつかった経験、乗り越えたこと、誰かのために頑張れた場面。
どんな小さなことでもいいです。
書き出してみると、気が付きます。
「あ、これって仕事でも使えるな」と。
その気づきが、セカンドキャリアの本当の出発点になります。
一人で考えることが難しければ、キャリアの専門家に話を聞いてもらうことも、ぜひ選択肢に入れてみてください。
第三者の目線があるだけで、自分では見えていなかった強みが、驚くほど明確になっていきます。
5. アスリートの競技人生は、すでに価値の塊だ
最後に、キャリアコンサルタントとして、一番伝えたいことをお話しします。
私がアスリートのセカンドキャリア支援を続けている理由の一つに、シンプルに「もったいない」と感じていることがあります。
これだけの時間を費やして、これだけの壁を乗り越えて、これだけの経験を積んできた人が、引退後に「自分には何もない」と感じてしまう。
その瞬間が、私には本当につらいです。
アスリートの競技人生は、すでに価値の塊です。
ただ、その価値を社会に届ける「言葉」と「方法」を、まだ持っていないだけだと感じています。
選択肢を狭めているのは、世の中でも、業界でも、アスリートのあなたの過去でもありません。
今この瞬間の、「自分にはどうせ無理」という、小さな思い込みかもしれない。
もしもその思い込みがあり、今日気づいてくれたのなら、この記事を書いた意味があります。
私はこれからも、アスリートのセカンドキャリア・デュアルキャリアを、全力で応援していきます。


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