【アスリートのセカンドキャリア支援で思う】なぜアスリートは “選択肢を知らないまま引退してしまう” のか

現役に全力を注いできた人ほど、引退後の道は「ない」のではなく、「まだ見えていない」だけのことがあります。
今回は、なぜ多くのアスリートが選択肢を知らないまま競技を終えてしまうのか、その背景と、未来を広げるために必要な視点を考えてみたいと思います。

目次

目次

  1. 引退が近づいたとき、苦しくなるのは“未来がない”からではなく、“未来を知らない”からかもしれない
  2. “引退後を考える余裕がない”のは、競技者として自然な毎日の中で起きている
  3. 実は今、日本でも “現役中から考えるキャリア形成” は広がり始めている
  4. それでも多くの選手に情報が届かないのは、“支援がある” ことと “使える” ことが違うから
  5. 選択肢を知らないまま引退すると、“できること”ではなく“知っていること”だけで人生を決めてしまう
  6. 見えていないだけで、可能性はすでにある
  7. 本当に必要なのは、“正解の職業” を急いで探すことではなく、“自分に合う選択肢” を増やすこと
  8. 引退後の不安を小さくする最初の一歩は、“自分には選べる未来がある” と知ることから始まる

1. 引退が近づいたとき、苦しくなるのは“未来がない”からではなく、“未来を知らない”からかもしれない

競技を続けていると、ある日ふいに胸の中をよぎり、こう、思うことがあるかもしれません。
この先、自分はどんな仕事をするのだろう。
競技を離れたあと、自分にできることは何だろう。

セカンドキャリアやデュアルキャリアという言葉は聞くけれど、どこか自分にはまだ早い話のようにも感じる。
けれど、気にならないわけではない。

アスリートが引退後に不安を感じるのは、特別なことではありません。
それは、競技の先にどんな道があるのかを知らないままここまで走ってきたからではないでしょうか。

競技に本気で向き合ってきた人ほど、目の前の毎日に全力を注いできています。
だからこそ、引退が近づいたときに初めて、「この先、自分はどこへ向かえばいいのだろう」と立ち止まりそうになるのだと思います。

不安の正体は、実力不足ではなく、情報不足であることが少なくありません。
そして、この情報不足は、本人の努力だけでは埋めにくいことも多いのです。


2. “引退後を考える余裕がない”のは、競技者として自然な毎日の中で起きている

現役アスリートの日々は、本当に忙しい。
練習、試合、遠征、リハビリ、コンディショニング、移動。
結果が求められる中で、将来のことを落ち着いて考える時間を持つのは、簡単ではありません。

しかも周囲からは、
「今は競技に集中しよう」
「結果を出してから考えよう」
という空気が生まれやすい。
これは悪意ではなく、競技の世界では自然な流れです。

だから、引退後の人生設計が後回しになるのは、甘えでも怠慢でもありません。
むしろ、競技に本気で向き合ってきた人ほど、そうなりやすい。
セカンドキャリア支援を考えるうえで、まず、このことを深く理解をしようと思っています。

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3. 実は今、日本でも “現役中から考えるキャリア形成” は広がり始めている

ここで大切なのは、何も支援がないわけではない、ということです。

スポーツ庁は、アスリートには引退後も見据えた人生設計が必要であり、そのためには現役時代からのキャリア形成が重要だと明記しています。
さらに、2025年の「Athlete Career Challenge」でも、キャリアは引退後だけでなく、現役時代からの延長線上にあると発信されています。

企業側にも、アスリートの自己管理力や計画性、人間性に価値を見いだす声があります。

つまり、選択肢はゼロではありません。
見えにくいだけで、少しずつ道は整い始めています。


4. それでも多くの選手に情報が届かないのは、“支援がある” ことと “使える” ことが違うから

ここに、このテーマの本質があります。

制度がある。
支援の仕組みもある。
でも、それが必要な人に、必要なタイミングで届いているかというと、まだ十分ではありません。

スポーツ庁の2026年度資料では、育成してきたアスリートキャリアコーディネーター約1,000名のうち、半数程度は日常的にアスリートから相談を受けているわけではないと示されています。
また、現役アスリートへ効果的にキャリア形成支援を行う支援者の不足も課題として挙げられています。
参考:令和8年度 アスリート社会貢献支援事業

つまり、仕組みがあっても、身近な相談相手がいなかったり、所属する環境によって情報量に差があったりすると、選手はその存在すら知らないまま引退を迎えてしまうことがあるのです。

私は、この “情報格差” こそが、アスリートのセカンドキャリアの見えづらさを生んでいる大きな原因の一つだと感じています。

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5. 選択肢を知らないまま引退すると、“できること”ではなく“知っていること”だけで人生を決めてしまう

本当は、向いている道がいくつもあるかもしれません。
企業で働く道。
指導者になる道。
地域でスポーツに関わる道。
教育、福祉、スポーツビジネス、発信、学び直し。
アスリートの経験が生きる場面は、思っている以上に広いと感じています。

それでも、生きる場面を知らなければ選べません。
人は、見えている範囲の中でしか選択できないからです。

だから、情報が少ない状態で引退すると、
「目の前にたまたまあった仕事」
「なんとなく知っていた道」
だけで人生を決めてしまいやすい。
それは、能力の問題ではなく、選択肢の見え方の問題です。

私はここに、とてももったいなさを感じます。
もっと早く知っていれば、もっと納得のいく道があったかもしれない。
そう思う場面を、支援の現場でも見てきたからです。


6. 見えていないだけで、可能性はすでにある

アスリートの話を聞いていると、思うことがあります。
この人には力がある。
この人には積み上げてきたものがある。
でも、その力がまだ競技の言葉のままで、社会の言葉に変わっていないだけなのだと。

うたとえば、長く競技を続けてきたこと。
結果が出ない時期も積み重ねてきたこと。
怪我から立て直したこと。
チームで役割を果たしてきたこと。
これらはすべて、仕事や人生の中でも価値になる経験です。

私自身、キャリア支援に関わる中で気づかされてきました。
人は、自分の世界しか知らないと、自分の可能性まで狭く見積もってしまう。
でも、外の世界とつながった瞬間に、「こんな活かし方があったのか」と表情が変わることがあります。

だから私は、就職先を急いで決める前に、まずは自分にどんな選択肢があるのかを知ることが大切だと思っています。

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7. 本当に必要なのは、“正解の職業” を急いで探すことではなく、“自分に合う選択肢” を増やすこと

引退が近づくと、焦ります。
早く決めなければ。
何か形にしなければ。
周りに遅れたくない。
そんな気持ちになるのは、とても自然です。

でも、焦って一つの答えを選ぶより、先に選択肢を広げるほうが大切なことがあります。

✅競技以外の世界で働く人の話を聞く。
✅自分の実績や経験を言葉にしてみる。
✅支援制度や相談先につながってみる。
それだけでも、見える景色は変わります。

「まだ決まっていない」は、遅れを取っていることではありません。
準備の途中です。
そして、選択肢が増えることは、不安を減らすことにもつながります。


8. 引退後の不安を小さくする最初の一歩は、“自分には選べる未来がある” と知ることから始まる

引退は、可能性がなくなる瞬間ではありません。
ただ、知らないままだと、可能性まで小さく見えてしまう。

アスリートには、競技で積み上げてきたものがあります。
そして、その経験が生きる場所は、思っているよりずっと広いかもしれません。

だからこそ、知らないまま終わらずに、
今のうちから、少しずつ外の世界に触れてみてください。
一人で抱え込まずに相談してみてください。
他人と比べずに、自分に合う道を探してみてください。

アスリートのセカンドキャリアで最初に必要なのは、完璧な答えではなく、
自分には選べる未来があると知ること
私は、それが希望の始まりだと思っています。

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