「賃上げ」のニュースが連日流れているこの世の中ですが、アスリートが現役中から持っておくべき「生活を守る視点」とは何か。
このことについて考えてみようかと思います。
目次
- 世の中は給料が上がっている。でもなぜ、アスリートの不安は消えないのか
- 「賃上げ」の波に乗れないアスリートが多い、これだけの理由
- 「お金の話」を避けてきたアスリートへ——生活を守る視点とは何か
- 賃上げの時代に「自分の賃上げ」を設計するために——今日からできること
- 不安が消えない本当の理由——それは「知らない」からだった
- 賃上げの波に、自分の力で乗っていくために
1. 世の中は給料が上がっている。
でもなぜ、アスリートの不安は消えないのか
少し考えてみてほしいことがあります。
2025年の春闘では、大手企業を中心に過去最高水準の賃上げが相次いで報告されました。
ニュースでは「30年ぶりの高水準」という言葉が踊り、政府も賃上げを経済政策の柱に据えています。
でも現実はどうでしょうか。
物価は上がり続けています。
社会保険料の負担も増えました。
非正規雇用の割合は、依然として高いまま。
厚生労働省の発表によれば、2024年の実質賃金は前年比でマイナスが続いています。
「賃上げされているはずなのに、なぜか生活が楽にならない」——その感覚を持っている人が、今の日本社会にどれだけいるか。
そしてこの「賃上げが進んでも不安が消えない」という社会現象は、引退後のアスリートに、もっと直接的な形で降りかかってきます。
引退後の収入と生活を、数字で語れるアスリートは、どれだけいるのでしょうか。
感覚ではわかっていても、紙に書き出せる人は本当に少ないのではないでしょうか。
引退後の収入と生活を、アスリートの皆さんは今、具体的にイメージできていますか?
2.「賃上げ」の波に乗れないアスリートが多い、これだけの理由
賃上げの恩恵を受けるには、実は条件があります。
正規雇用であること。
同じ職場に継続して勤めていること。
賃上げに積極的な企業・業界にいること——これらが前提になっていることがほとんどです。
引退直後のアスリートの現実はどうかというと、「職歴なし・業界未経験・スポーツ以外のスキルが言語化できていない」という状態からスタートするケースが圧倒的に多いです。
これは珍しいことではなく、賃上げの波が来ていても、その波に乗る船に、まだ乗れていない状態といえます。
もう一つ、どうしてもお伝えしたいのは、アスリートには「収入の崖」と呼べる現象が待っています。
現役中は、チームや組織が生活の多くを支えてくれていました。
寮費・食費・遠征費・トレーニング費用——気づかないうちに、相当な金額を負担してもらっていたはずです。
それが引退した瞬間、全部自分の話になります。
社会保険料・住民税・国民年金。
現役中は「なんとなく引かれているもの」だった費用が、引退後は自分で全額払う現実になります。
「え、こんなに取られるの?」と声に出してしまう人が後を絶ちません。
収入が増える前に、出費の地図がまるごと書き換わる。
これが「引退後の生活を守ること」が思っている以上に難しい、一番の理由だと考えます。
3.「お金の話」を避けてきたアスリートへ——生活を守る視点とは何か
「引退後のお金の話をしましょう」と切り出した瞬間、ふっと目が泳ぐアスリートがいます。
「お金の話=夢がない話」という感覚が、どこかにあるのかもしれません。
でもその感覚、わかります。
競技中は「お金より競技」という価値観で生きることが、当たり前の世界でした。
チームが食事を用意してくれて、遠征の手配をしてくれて、トレーニング環境を整えてくれた。
お金のことを誰かが考えてくれる環境に、長年いましたからね。
でも引退後は、その環境がなくなります。
だからこそ「生活を守る視点」が必要になります。
これは節約の話でも、貯金の話でも、ましてや夢を諦める話でもありません。
「自分の生活コストを知った上で、キャリアを設計する力」——それが生活を守る視点の本質です。
月にいくら必要か。
引退後にどんな出費が増えるか。
どんな収入の形が自分のライフスタイルに合うか。
これを知っているかどうかが、引退後のキャリア選択の自由度を大きく変えます。
お金の話は、夢を諦める話ではありません。
夢を現実に続けるための、土台の話です。
4. 賃上げの時代に「自分の賃上げ」を設計するために——今日からできること
ではアスリートは、「何から始めればいいか」——その問いに対して、次の三つのアクションは、いかがでしょうか。
アクション①「月々の生活費を、一度だけ紙に書き出す」
家賃・食費・通信費・保険料——まず項目を書き出して、合計を出してみてください。それだけです。
「自分が月にいくら必要か」を知っているかどうかで、引退後のキャリア選択の自由度が変わってきます。
難しく考えなくていいです。
10分あれば、今日できます。
アクション②「引退後に増える出費を、今のうちに調べておく」
健康保険・住民税・国民年金——現役中にチームや組織が負担していた費用が、引退後にどれだけ自己負担になるかを一度調べてみてください。
日本年金機構や各自治体のウェブサイトで、おおよその金額を確認できます。
「想定外」がなくなるだけで、引退後の不安は驚くほど小さくなります。
アクション③「現役中に、競技以外の収入の種を一つ蒔いておく」
SNS発信、スポーツ指導、コンテンツ制作——金額は小さくていいです。
競技以外で「お金をいただく経験」を一つ持っておくと、引退後の収入設計がまったく変わります。大切なのは金額より「自分でお金を作れる感覚」を持つことです。
その感覚が、引退後の心の余裕に直結します。
「自分の賃上げ」は、誰かがしてくれるものではありません。
自分で設計するものです。
5. 不安が消えない本当の理由——それは「知らない」からだった
賃上げが進んでいても不安が消えない。その正体は、実はシンプルなものだと考えます。
お金が足りないのではなく、「何が必要かを知らない」から不安なのです。
生活を守る視点を持ったアスリートの引退後は、キャリアの選択肢が広くなります。
「食べていくために仕方なく選んだ仕事」ではなく、「生活を守りながら、やりたいことに近い仕事を選べている」——そういう状態になっていきます。
支援の現場も、その違いを目の当たりにしてきました。
不安は「感じないようにする」より「正体を知る」ほうが、ずっと小さくなります。
今日この記事を読んで、何か一つでも「知ろうとする気持ち」がアスリートこ気持ちの中に生まれたなら、それは嬉しいことです。
6. 賃上げの波に、自分の力で乗っていくために
最後に、私が伝えたいこととして、
「賃上げしてもらう側」でいることと、「自分でキャリアを設計する側」でいることは、まったく違う人生を作ります。
アスリートには、どんな環境でも自分を律して動ける力があります。
その力は、キャリアの設計にも必ず活きます。
生活を守る視点は、夢を諦める視点ではありません。夢を守る視点です。
アスリートが引退後に知っておくべきお金の基礎知識として、もっと具体的に、「社会保険って何が変わるの?」「住民税はいつから払うの?」——こういう視点を持って、マネープランを整理してみてほしいです。
これからもアスリートのキャリアと生活を、心から応援しています。


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