突然ですが、同じ競技レベルで同じタイミングで引退したのに、その後の人生がまったく違う——その差はいったいどこから生まれるのか。
今日はその「答え」を考えてみたいと思います。
目次
- 引退後に「すんなり動ける人」と「立ち止まってしまう人」の、たった一つの違い
- 「競技だけが自分」になっていないか? 一度立ち止まって考えてほしいこと
- “競技の外の役割” って、難しく考えなくていい
- 支援の現場で出会った、引退後も強かった人たちの共通点
- 今からでも遅くない。現役中にできる「外の役割」の作り方
- 競技の外に立つあなたは、もう引退後を生きている
1. 引退後に「すんなり動ける人」と「立ち止まってしまう人」の、たった一つの違い
アスリートの引退後のキャリア支援に携わっているときに、私がまず気になるのは「競技の成績」でも「学歴」でもありません。
「競技以外に、何か役割を持っていましたか?」
この一つの問いに対する答えが、引退後の動き出しの早さに、驚くほど影響していると感じています。
競技の外に小さな役割を持っていた選手は、引退後の社会に対して「まったく初めての場所」という感覚を持ちにくい。
一方、競技だけに全力を注いできた選手は、引退の瞬間に「自分が社会から切り離された」ような感覚を覚えることがあります。
どちらが正しいとか、どちらが偉いという話ではありません。
ただ、是非知っておいてほしいことがあります。
競技の外に役割を持つことは、引退後の準備であると同時に、今の自分をもっと豊かにすることでもあるということです。
2. 「競技だけが自分」になっていないか?
一度立ち止まって考えてほしいこと
アスリートが競技に全力を尽くすことは、本当に美しいことだと思っています。
その集中力と献身があるからこそ、結果が生まれる。
それは間違いありません。
ただ、支援の現場で気になることが一つあります。
競技への集中が深まるほど、気づかないうちに「競技=自分のすべて」という状態になっていくことがあります。
心理学的には「アスリートアイデンティティ」と呼ばれる状態です。
競技に自分を重ねることで生まれる強さがある一方で、引退の瞬間に「競技がない自分は何者なのか」という感覚に陥りやすくなります。
これは決して弱さではなく、真剣に競技と向き合ってきた証拠です。
ここで一度、ご自分に問いかけをしてみてください。
「私は今、競技以外にどんな役割を持っているだろう?」
すぐに答えが浮かばなくても、大丈夫です。
この問いを持つこと自体が、すでに大切な一歩です。

3. “競技の外の役割” って、難しく考えなくていい
「競技の外に役割を持つ」と聞くと、何か特別なことをしなければいけないように感じるかもしれません。
でも、そんなことはまったくありません。
先ほどから話に出している「役割」とは、例えばこんなことで十分です。
地域のスポーツイベントにボランティアで参加する。
自分の競技の楽しさをSNSで発信してみる。
チームの広報や記録係を買って出る。
競技以外のアルバイトや地域活動に関わってみる。
どれも、すごく特別なことではありません。
大切なのは「競技と違う自分を経験すること」です。
競技の外に出ると、初めて気づけることがあります。
自分が誰かの役に立てること、言葉で伝えることが得意なこと、人を動かす力を持っていること
——競技の中にいるだけでは見えなかった「自分の別の顔」が、少しずつ見えてきます。
その経験の積み重ねが、引退後の社会での「自分の居場所」になっていくと感じております。
4. 支援の現場で出会った、引退後も強かった人たちの共通点
ここで、私が実際に対談した元アスリートの話から感じてきたエピソードをいくつか紹介させてください。
ある選手は、現役中から地域のスポーツ教室で子どもたちに競技を教えるボランティアを続けていました。
引退後、「教えることが好き」という自分の強みにすでに気づいていた彼女は、教育関連の仕事にスムーズに進んでいきました。
また、ある選手は競技の傍らで飲食店のアルバイトを続けていました。
「お客様に喜んでもらえる瞬間が好き」という気づきが、引退後のサービス業への転身を後押ししました。
これらのエピソードですが、共通していることが一つあります。
競技の外で「誰かのために動く経験」をしていた、ということです。
その経験が、引退後の社会でも自分を動かすエンジンになっていました。

5. 今からでも遅くない。現役中にできる「外の役割」の作り方
「でも、今の自分には時間も余裕もない」と感じているかもしれません。
その気持ちは、本当によくわかります。
だから、完璧な準備は要りません。
まずは、この3つのステップだけ試してみてください。
Step1:「競技以外で、自分が興味を持てることは何か」を紙に書き出す
好きなこと、気になること、誰かに褒められた経験、なんでも構いません。頭の中にあることを、とにかく言葉にしてみることから始めてください。
Step2:週にたった1時間だけ、競技の外の世界に触れてみる
大きく変わる必要はありません。
1時間、競技以外の何かに触れることで、世界が少しだけ広がります。
その積み重ねが、やがて大きな財産になります。
Step3:その経験を誰かに話す、または言葉にして残す
経験は「言葉にしてはじめて自分のもの」になります。
話す相手は友人でも、SNSのフォロワーでも構いません。
アウトプットすることで、自分の中に眠っていた強みが明確になっていきます。
完璧にやろうとしなくて大丈夫です。
やってみることに、意味があります。
6. 競技の外に立つあなたは、もう引退後を生きている
最後に、私の正直な気持ちをお伝えさせてください。
アスリートが競技の外に役割を持つことは、引退後のための「準備」というより、今この瞬間にアスリートを豊かにする行動だと私は思っています。
競技で磨いてきた力は、社会に出たとき、必ず誰かの役に立ちます。
ただ、その力を届けるためには、社会との「接点」が必要です。
その接点を、現役のうちに少しずつ作っておくことが、引退後の自分への最大のプレゼントになります。
アスリートとしての時間は、本当に尊いものです。
でも、その時間の中に「競技の外の自分」を少しだけ加えることで、引退後の人生は驚くほど豊かになります。
あなたにとっての「競技の外の役割」は、何でしょうか?
仮にその答えが、今すぐ出なくても構いません。
この問いを持ち続けることが、きっとアスリートのあなたのセカンドキャリアの道を、少しずつ照らし始めてくれると、私は信じています。
アスリートのあなたの競技人生と、その先の人生を心から応援しています。


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